生活習慣と子どもの成長・・寝ること、食べること、遊ぶこと

                                  かねはら小児科院長  金原洋治

桜の季節になりました。子ども達は、入園、入学、進級し、友達や先生も変わり新しい環境での生活が始まります。子ども達が、新しい環境でのびのびと成長していくことができるように願っています。子ども達の成長にとって、なによりも大切なのは日々の規則正しい生活です。日々の生活の中で大切にして欲しいことをお話しましょう。

寝る子は育つ、寝る子はよく学ぶ

 日本の子どもは世界一寝る時間が少ないと言われています。最近の調査では夜10時以降に起きている3歳児の割合は52%もいて世界の先進国の中でも日本は突出しています。東京の小学生と中学生の調査では、体調不良児の6割が睡眠不足の状態で、この10年間で1.5倍に増加しています。小学生の訴えのベストスリーは、あくびがでる、眠い、横になりたい。中学生が選んだ項目はちょっとしたことが思い出せない、物事に熱心になれない、考えがまとまらない。これが子どもの症状かと思われるような訴えばかりですね。

 睡眠不足が続くと、脳のホルモンのセロトニンの活性が低下しうつ傾向になりますし、不登校の原因にもなると言われています。気が滅入り攻撃性や衝動性が高まります。夜遅くまで起き明るい光を浴び続けると、睡眠を誘うホルモンのメラトニンが低下し眠れなくなります。慢性の時差ぼけ状態のため、疲れやすく、集中力ながくなります。イライラし、感情のコントロールができなくなります。また背を伸ばす成長ホルモンの分泌も悪くなります。朝ごはんを食べないので低血糖になります。集中力がなくなりますし、うんちをする時間がなくなるので便秘になり腹痛を訴える子どもが増えます。お父さんお母さん、今日から子ども達を1時間早く寝かせ、朝30分〜1時間早く起こすことから始めましょう。

朝ご飯を食べること

 朝食は体と脳を目覚めさせるガソリンですが、最近の調査では朝食を食べない子が19.1%もいるようです。びっくりしますね。食べないのは、遅く起きるのでおなかがすかない、食べる時間がない、親がつくらないのが主な原因です。朝ご飯を食べないと、低体温、低血糖になり、体がだるくなったり、イライラしたり、頭が働かなくなります。記憶力や集中力、想像力が低下します。早く起こし、おにぎり、パン、バナナ、ヨーグルトなど何でもいいですので食べさせて園や学校に送り出しましょう。

ゲーム、テレビ、パソコン

 子どもの体や心が健康に育つには、日々の暮らしの中で大人や子ども同士の生身の付き合いが必要です。現代の生活にはテレビやビデオ、ゲームなど起きている時間の多くの時間をこれらのメディアと接触する時間が占め、人間同士のコミュニケーションの時間を確実に奪っています。体を動かして遊ぶ時間が少ないので、運動能力は確実に低下しています。5歳児の歩行数は、一日1万2000歩から5000歩へ減っていますし(20年前との比較)。背筋力も低下しているし視力もかなり低下しています。長時間のメディアとの接触はことばの遅れ、コミュニケーション能力も低下する可能性がある他、睡眠不足、イライラ、多動性や衝動性が高くなると言われています。

 私たちの日常生活の中にはIT機器があふれ、毎年新しいIT機器が商品化され私たちの暮らしはますます便利になっていくでしょう。しかし、使い方によっては、成長途上の子どもの体や心をじわじわと蝕ばんでいく危険性があることを肝に銘じ十分に注意して使うようにしましょう。

こどもとIT使用上の注意点

@    ゲームは早くから買い与えない。

A    ゲーム機やテレビは子供部屋には絶対におかない。

B    寝る前の2時間はゲームやパソコンは使用させない。

C    インターネットやメールは3〜4年生から。

D    使用させる時には、正しい使用法と危険性を十分に教える。